生産工程で水を使用する工場のほとんどに水(排水)処理設備があり、そこでは必要不可欠なたくさんのスクリーンが使用されています。
それらが何のために使用されているのか、無ければどうなるのか、解明してみたいと思います。
私たちは、河川の水や地下水を生活・産業のための用水として活用し、利用し終えた水は再び河川や海等の自然環境に放出しています。
当然、私たちはこの循環の中で生活する以上、排水からは汚染物質を極力取り除き、環境への負担を減らす方法を考えなければなりません。
水処理には様々な手法が存在しますが、大別すると
「物理処理」、「生物処理」および「化学処理」があります。
簡潔に言えば、「物理処理」は網や膜によって物理的にゴミを回収する方法、「生物処理」は微生物によって水中の有機物を分解し浄化する方法(自然の浄化作用を利用したもの)、「化学処理」は紫外線による殺菌や凝集剤を利用するなど、化学的に水の浄化を行う方法です。
一般的に、水処理はこれらの組合せによって行われます。
ウルトラTNスクリーンが使用されるのは主にこれらの処理の最初の段階である「物理処理」の工程です。
この工程で、ある程度の液中の固形物を回収することにより、後段に控える「生物処理」「化学処理」の負担を減らすことが期待できます。
ウルトラTNスクリーンで水処理コストダウン
1971年(昭和46年)6月施行された水質汚濁防止法により、対象となる食品工場・食材加工工場では排水処理が必須となりました。
油脂分やでんぷん・たんぱく質など原水を規制値以下の濃度に下げるために、工程上コストがかかってきます。
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原水槽とは:生物膜分離装置への生物処理液を供給する際に水量調節を行う水槽です。
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※2 |
調整槽とは:水量や水質を可能な限り均一にして、次の排水処理施設にかかる負荷変動を小さくする役割
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※3 |
加圧浮上装置とは:主に水処理で用いられている処理方法の一つ。
水の中の空気による微細な気泡を大量に発生させ、これを浮遊物質を含む水に混合して浮遊物質を捕らえさせた後、気泡の浮力を利用して浮上させて、水から浮遊物質を取り除く。
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※4 |
活性汚泥槽とは:ばっ気(液体と空気を接触させて、液体に空気中の成分(酸素等)を吹き込むこと)して好気的な微生物に汚濁物質を分解させ、汚濁物質濃度をばっ気量を適切に管理することで凝集する細菌を増殖させて沈降分離することで、綺麗な処理水を得る方法です。
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※5 |
沈澱槽とは:一般的に、汚水中の浮遊物を沈澱分離して、沈殿物と上澄み液に分ける水槽のこと。
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日本環境科学研究所を参照
ウルトラTNスクリーンは生物処理の名わき役
食品加工工場の排水など有機物を含む水処理設備では、主に生物処理によって汚水を浄化しています。
「生物処理」は前述の通り、微生物が有機物を分解(つまり食べる)ことによって水を浄化させます。微生物に効率よく分解してもらうためには、継続的に酸素を供給し、微生物が仕事をしやすい環境を用意してあげなければなりません。
ばっ気を行うためにはエネルギーコストがかかってきますし、浄化の過程で発生した汚泥を回収し脱水するのにもコスト・人手が必要になってきます。
そこで前処理としてスクリーンは流入する排水中から固形物を回収しておくことによって、微生物が仕事をしやすい環境を整えています。微生物が効率よく分解をしていけば、それだけ処理にかかるコストを減らしていけることになります。
もしも、スクリーンがなかったら?
もしも、ウルトラTNスクリーンが水処理工程に存在しなかったらどうなるでしょうか?
製造工程から排出された汚水中にある固形物は、回収されることなくそのまま処理装置に流入します。
もちろん、それだけの有機物を分解しきるのには時間がかかります。
また微生物が食べきれなかった分は汚泥として残りますから、これを回収する人手や処理費用がかかってきます。
処理効率を維持するにはより大型の装置にアップグレードする必要もあるでしょう。
そうなれば設備の購入費用や工事など、どんどん膨れ上がっていきます。
数字で見る効果
このウルトラTNスクリーンによってどれだけ水質が改善されたかを示す環境指標がいくつかありますが、固形物の除去は懸濁物質(通称SS)の濃度で分析ができます。
SS濃度は水中に浮遊する2mm以下の粒子の不溶解性物質のことを指します。
また、後段の生物処理への負荷軽減としては生物化学的酸素要求量(通称BOD)があります。
これは、水中の汚れのもととなる物質を微生物が分解するときに使用する酸素量で表されます。
以下の表の例は実際の工場排水で試験した水質分析結果の例です。
排水種類 |
SS濃度(mg/L) |
BOD(mg/L) |
処理前 |
処理後 |
除去率 |
処理前 |
処理後 |
除去率 |
樹脂粉回収 |
7800 |
1100 |
85.9% |
-- |
-- |
-- |
製紙排水 |
790 |
230 |
70.1% |
-- |
-- |
-- |
冷凍食品加工排水 |
780 |
430 |
44.9% |
980 |
870 |
11.2% |
豆腐製造排水 |
1390 |
910 |
34.5% |
5500 |
4900 |
10.9% |
水産加工排水 |
540 |
330 |
38.9% |
8900 |
8600 |
3.4% |
食肉加工排水 |
1600 |
1100 |
31.3% |
9000 |
8400 |
6.7% |
※実際の排水は状況により水質が大きく変動しますが、その一瞬を切り取ったデータであり、能力を保証するものではありません。